ダイレクトアナストモーシス現実にある?実際難しい理由も解説!

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ダイレクトアナストモーシス現実にある?実在する術式?実際難しい理由を解説!ブラックペアン2

7月より、TBS日曜劇場『ブラックペアン2』が始まり、「面白い!」「手術シーンがリアル!」と話題になっていますね。

二宮和也さん演じる天才外科医・天城雪彦(あまぎ ゆきひこ)だけができるとされている「ダイレクトアナストモーシス」という術式。

初めて聞くワードに「?」となった方も多いはず。

この記事を読んでいる方は、下記のような疑問をお持ちではないでしょうか?

ダイレクトアナストモーシスって実在する?
現実できる人はいる?
実際どれだけ難しいの?

この記事を読むことで以下のことがわかります

・ダイレクトアナストモーシスの手術方法(バイパス手術との違い)
・ダイレクトアナストモーシスは実在するのか
・冠動脈でのダイレクトアナストモーシスが難しい理由

冠動脈やバイパス手術に関する基本知識も、できるだけわかりやすく解説しました!

「ダイレクトアナストモーシス」に対する理解が深まると、今後ドラマを見るのがより楽しくなりますよ♪

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目次

ダイレクトアナストモーシスとは?バイパス手術との違いを解説!

『ブラックペアン2』では、心臓血管外科や循環器外科が舞台。

これからどんどん医療専門用語も出てくると思いますが、漢字の羅列や略語ばかりで、素人にはさっぱりですよね(笑)

でも、実際どこの部位を手術しているのか、少しでもイメージできると、ドラマをより楽しめるようになります!

できるだけ簡単にわかりやすく解説するので、ぜひしっかり読んで、理解を深めてみてください♪

※筆者は医師ではないため、細かい点は間違っているかもしれませんが、ご容赦ください。

冠動脈とは

「冠動脈」って、聞いたことはあるけど、実際心臓のどこを走ってる?と思っている方も多いのではないでしょうか。

まずは、冠動脈の役割と位置を確認してみましょう!

心臓の筋肉に血液を送っている血管を「冠動脈(冠状動脈)」といいます。

心臓の表面を走っており、心臓に酸素やエネルギー源を供給している、とても大事な血管です。

画像引用元:看護roo!

上図のとおり、心臓から出ている、太い上行大動脈(直径3~3.5cm)から、心臓にまきつくように存在しています。

右冠動脈は、Right Coronary Arteryを略して、RCAともいわれます(同様に、左冠動脈はLCA)。

右冠動脈は1本ですが、左冠動脈はさらに左回線枝(LCX)、左前下行枝(LAD)に分かれます。

ドラマ内でも、会話の中に略語がどんどん出てくると思うので、なんとなく覚えておきましょう♪

冠動脈とは、心臓の表面にある血管で、心臓に酸素やエネルギー源を供給している!

そして、冠動脈が関わってくる疾患が、狭心症心筋梗塞です。

冠動脈は、直径2~4mmという細さです!

この冠動脈の一部が細くなったり、詰まりかかったりすると、心臓へ十分な酸素や栄養が届かなくなります。

これが狭心症です。

そして、冠動脈がさらに完全に詰まったり、急速に細くなり、心臓の筋肉細胞が死んでしまう(壊死)と、心筋梗塞となります。

壊死した心臓の筋肉(心筋)は再生しません。

めちゃくちゃ簡単にまとめると…

・冠動脈の一部が細くなる(狭窄)⇒狭心症
・冠動脈が完全に詰まる⇒心筋梗塞

これらを合わせて「虚血性心疾患」といわれます。

虚血性心疾患の原因は様々ですが、多くが冠動脈の壁にコレステロールが溜まる「動脈硬化」と言われています。

冠動脈バイパス術(CABG)とは

これまで説明したとおり、冠動脈が狭窄したり、完全に詰まってしまった場合には、心臓に十分な血液が送られなくなるため、早急な治療が必要となります。

治療方法には大きく3つあります。

・薬物治療
・カテーテル治療
・バイパス手術

今回のドラマでは、手術適応になるような重症な患者さんが出てくると予想されるため、バイパス手術に関して、理解を深めておきましょう!

冠動脈バイパス手術は、Coronary artery bypass graftを略して「CABG」と言われることもあります。

バイパス手術は、全身麻酔をかけて胸を開き(開胸)、詰まった冠動脈の先に迂回路(バイパス))を作る手術です。

バイパスとして使う血管(グラフト)は、人工血管ではなく、自分の身体の別の部分から取ってくる必要があります。
(人工血管はまだ成績の良いものがないようですね…)

ただ、血管を採取して、他の部位に異常が起きてしまっては困るため、グラフトにできる血管は限られているんですよ!

よく使われる血管は、下記のとおりです。

冠動脈バイパスとしてよく使われる血管

・肋骨の内側にある内胸(ないきょう)動脈
・手首の橈骨(とうこつ)動脈
・脚の大伏在(だいふくざい)静脈
・胃の胃大網(だいもう)動脈

このうちどれを選択するかは、実際にそれぞれの血管が使える状態かを確認したり、閉塞血管の位置、症例の実績の多さなどから医師が判断します。

第1話では「橈骨動脈と腹部は使えない」というセリフがありましたね!

このあたりの知識をなんとなく理解しておくと、ドラマをより細かいところまで楽しめるようになります!
(今後もたくさん出てくると思うので)

ダイレクトアナストモーシスとは

前置きの説明が長くなってしまいましたが、いよいよ本題です!笑

ダイレクトアナストモーシス(Direct Anastomosis)とは、直訳すると「直接吻合法」。

「Anastomosis」は、医療業界でもよく使われる単語で、血管や腸管、神経などの管腔物(中が空洞になっている、チューブのような器官や組織)を手術でつなぐ方法のことを指します。

そして『ブラックペアン2』の中では、この「ダイレクトアナストモーシス」は、世界でただ一人、天城雪彦のみができる心臓冠動脈バイパス術の進化形として、位置づけられています。

『ブラックペアン2』での、ダイレクトアナストモーシスとは…
冠動脈で詰まった血管を切除し、自分の別の血管(グラフト)を直接つなぐ方法!

先ほど紹介した、冠動脈バイパス手術(CABG)ができない患者さんに対しては、唯一の治療法となるのでしょう。

ただ、現実世界では珍しい症例のようですね!(※ブラックペアン医療監修の山岸先生のポストです)

ちなみに第一話では、患者さんの病名が「虚血性心筋症かつ両側内胸動脈起始部閉塞」となっていました。

「両側内胸動脈起始部閉塞」と漢字だらけで、一般視聴者はスルーしがちですが…(笑)

左右両側の内胸動脈の根元が閉塞しているだけで、本幹(わかりやすく言うなら中央部分)は生きている=グラフトとして使える症例のようです!

そのため、切除した冠動脈をつなぐグラフトには、内胸動脈の本幹が使われていたようですね。

ドラマなのに、本当に細かいところまでよく考えられているな…と感動しました(笑)

ダイレクトアナストモーシス現実に実在する手術方法?論文はある?

ブラックペアン2では、頻繁に出てくることが予想される「ダイレクトアナストモーシス」。

この術式が、現実世界で本当にあるのかどうか、できる人がいるのか、気になりますよね。

結論から言うと…術式としてはあります!!

ただし、論文など調査してみましたが、冠動脈に限ると、どれだけやられているのかは不明でした。

上で紹介しましたが、直訳だと「ダイレクトアナストモーシス=直接吻合術」なので、冠動脈に限った術式ではありません。

・血管
・腸管
・神経
・リンパ管

冠動脈のような血管だけでなく、腸管、神経などの管腔物を手術でつなぐ際にも使われる術式と思われ(※違っていたらゴメンなさい)、これらをつなぐ手術はよく行われています!

『ブラックペアン2』では、狭窄した冠動脈を取り除き、そこに別の自分の血管(グラフト)を入れて吻合していましたが、この欠損部位が少ない場合は、切断した組織同士を直接吻合する場合もあります。

また、臓器移植や自家組織移植術においても、ドナーの血管をレシピエント(患部側)の血管に、直接縫合する場合もありますね!

⇒一般的に、端々吻合(End-to-end anastomosis、エンドトゥーエンド)と言われます。

ただ、ダイレクトアナストモーシスを冠動脈で行うとなると、難易度が一気に高くなると考えられます!

次に、その理由を紹介していきますね!

術中に流れる、クラシック音楽一覧をまとめました!

なぜその音楽が選ばれているのか、各話ごとに理由も考察しています♪

冠動脈のダイレクトアナストモーシスが実際難しい理由

『ブラックペアン2』で、天城雪彦のみができるとされる「ダイレクトアナストモーシス」。

詰まった血管を取り除き、別の血管を入れて、断端を縫合する…

絵で見ると、素人でも何をしているかわかりやすく、とてもシンプルな術式に思えるかもしれませんが、冠動脈で実際やるとなると、相当難易度は高いと思われます。

ドラマ内では、世界で天城医師しかできない、神業と言われていますよね!

他の部位と比べて、どういった点が難しいのか、筆者の経験と知識を基に、解説していきます!
(あくまで個人の見解なので、ご参考までに…)

※筆者は医師ではないですが、動物実験レベルでマイクロサージャリーの経験は多数あります

①非常に繊細な手技である

ドラマ内で手術シーンはアップで映るため、テレビ映像で見ているとどうしてもサイズ感を勘違いしがちなのですが、実際はかなり細い血管を縫合しています。

その太さ、なんと直径2mm!(第一話より)

そして、7-0、8-0という髪の毛よりも細い糸で、血管を縫合しています。

通常の手術では肉眼でも行えることも多いですが、このような細い血管や神経、リンパ管などを扱う際は、手術用の顕微鏡や拡大鏡を使います。

セッシ(ピンセット)や持針器(糸付きの針をつかむ器具)なども、マイクロサージャリー用のオペ道具を用いますが、顕微鏡または拡大鏡を通して、自由に使いこなせるようになるまでには、日々の修練が必要です

7-0、8-0という糸(数字が大きくなるほど細い)は、筆者も扱ったことがありますが、少し引っ張るだけで、すぐに切れてしまうので、繊細な作業が求められます!

血管も裂けないように、うまく断端が合うように縫う必要があるので、糸をかける位置も重要なんです。

このすごさを体感するためにも、ぜひ「2mm」という大きさを再確認してみてください!

身近にあるものだと、爪楊枝が直径約2mmでした(笑)

②スピードが求められる

『ブラックペアン2』内での「ダイレクトアナストモーシス」は、詰まった冠動脈を取り除き、自分の別の血管(グラフト)を入れて縫合する術式です。

手術する血管には通常、血液が流れている(術後は正常に流れないようにしないといけない)ので、血管をクリップのような器具で挟み、一度、血流を完全に遮断する必要があります。
※この操作を「クランプ」といいます。

そのため、一時的にその血管には血液が全く通らなくなるため、できるだけ早く血管を縫合してつなぎ、血流を再開させる必要があるのです!

とても小さく繊細な手技が求められますが、天城医師は吻合箇所が2ヶ所で合計5分とのこと…

血管はぐるっと一周縫合しないといけないので、片側で10針程度は必要だと思うのですが(汗)

本当にこの速さでオペできる人いるの?と、信じられない速さです。

(だからこそ、天城医師にしかできない設定なのだと思いますが)

③心臓が拍動している状態で手術する

上でも紹介した、実際の臨床現場で血管や腸管、神経などでよく行われている「ダイレクトアナストモーシス」は、周りがほぼ静止状態で行うことが多いと思います。

一方、冠動脈のダイレクトアナストモーシスとなると、近くで心臓が拍動している中で、オペをしないといけません。

※オンポンプ手術(心臓をいったん止めて、人工心肺という装置を心臓代わりにして手術を行う)場合もあります。

「スタビライザー」と呼ばれる、局所的に心臓の動きを抑える器具も使ってはいるようですが…

実際にやってみるとわかりますが、周囲が動いている環境下で、細かい縫合作業をするのって、ものすごくストレスだし、大変なんです。

誤って、違うところに針を刺してしまった…ということも、容易に起こりえます。

第一話でも、しっかり心臓が拍動している中で、天城医師は難なくオペを進めていましたが、本当にすごいと思いました!

④血管の太さが全く同じとは限らない

冠動脈バイパス手術では、下記動画のとおり、基本的に血管の側面に他の血管(グラフト)をつなぎます。

そのため、吻合部位のサイズは調整しやすいと考えられます。

しかし「ダイレクトアナストモーシス」では、血管とグラフトの断端2ヶ所をつなぐ必要があるため、それぞれの太さがほぼ同じでないと、縫合もしづらくなります。

もちろん基本的には、同じような太さのグラフトを採取する方針で進めると思いますが、必ずしも同じ太さのグラフトが見つかるとは限りません。

オペをする冠動脈自体の太さが直径2~4mmという世界なので、グラフトの太さが1-2mm違ってくるだけで、縫合の難易度は大分変わってきます。

⑤開存性を維持する必要がある

これが最も重要なポイントであり、難しいところだと思います。

神経や腸管と違って、吻合後の血管には血液が流れることになります。

無事に血管にグラフトをつないだら、血管を遮断していたクリップをはずし、クランプを解除して、血流を再開させるのですが…

縫合箇所が足りなかったり、うまく血管同士がつなげていないと、隙間から血液が漏れ出してしまうのです。

また、縫合直後はうまく血液が漏れずに流れたと思っても、適切に吻合できていないと、しばらくして吻合部位に炎症が起き、再狭窄してしまう可能性もあります。

しかも2ヶ所で吻合しているので、そのリスクは単純に2倍…

冠動脈でのダイレクトアナストモーシスを失敗なく行える、天城医師は本当に「神に愛された悪魔」ですね!

また、スナイプ手術や医療AIエルカノについて、詳しく知りたい方は、こちらの記事もどうぞ↓

第2話で話題になった、アップルパイが買える店舗や口コミも紹介しています♪

まとめ:ブラックペアン2天城医師のダイレクトアナストモーシスに注目!

『ブラックペアン2』で、天城雪彦だけができるとされている「ダイレクトアナストモーシス」という術式について、詳しく紹介しました。

冠動脈バイパス手術の進化形として、繊細な技術が求められるかなり難易度の高い術式です。

現実世界でも「ダイレクトアナストモーシス(直接吻合法)」は、血管・神経・腸管などで行われている、実在する術式ですが、冠動脈となると症例はほぼないと思われます(もし違ったら、ご指摘ください!)。

ドラマ内の手術シーンは、心臓などはもちろん本物ではないとのことですが、とても再現度が高いと思いました!

医療監修には山岸先生も入られており、非常に細かいところまでこだわっって、リアルに表現されています。

背景知識を少し頭に入れると、さらにドラマを見るのが楽しくなりますよ♪

これからどんな「ダイレクトアナストモーシス」が繰り広げられるのか、注目していきましょう!

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※本ページの情報は2024年7月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにて ご確認ください。

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